#26 きんぴら
インターネットというものが世の中に普及したお陰で、五反田近辺以外の方の来院も増えた。お世辞にも近いですねとは言えないような場所からいらっしゃっていただく患者さんも増えてきた。
そこには近くの患者さんとは少し異なる、独特のドラマがある。
こないだから来院し始めた患者さん、その方は茨城県からわざわざいらっしゃってくださっている。
仮に『茨城の母』とすると“母”は、長年に渡る首・肩のコリと頭痛に悩まされ続けていた。当院に来る前にも、地元の数ヶ所にもわたる病院に通院していたがどこに行って検査をしても原因不明としか言われない、そんな状況であった。
私自身この仕事をする上でひとつ意識していること、
それは『初めて出会う患者さんの第一印象をしっかりと覚えておくこと』だ。
茨城の母の第一印象は、パッとみてすぐ、
“疲れきっているな・・・” そう感じた。
おそらく元々は非常に元気のある方であったのだろうが長年の身体の不調に加え精神的にも疲労しきっている、そんな感じであった。
しかも、初回来院時はご主人とお嬢さんも同伴しており、まさに一家の命運ここにあり、といったところ。ものすごいプレッシャーであった。
とは言え四の五の言っても始まらない。とにかく元気になってもらいたい、そう思い施術を開始した。
茨城の母、本人は全身の筋肉が固いと言っていたが触ってすぐに私が感じたのは
“全身の筋肉の力の抜き方がわからなくなっている”
ということだ。
自分自身ではいれているつもりのない力が入っている状態、実はこの状態の人というのは現在来院されている方にも非常に多いのだ。これはものすごく身体に負担がかかる上に本人はそんなつもりもないのでまったく気づかないという厄介な状態なのだ。
なので、その点を話しつつ施術を進めていった。
自分自身で、身体に負担をかけ続けていることに気づけば何もそんな事はしないもの、“茨城の母”の違和感は徐々に軽減していった。そんなある日、数回目の施術中に母から不意にこんな話がでた・・・
『最近、きんぴらが家で作れるようになったんですよ・・・』
母曰く、首・肩の慢性的なだるさのせいで台所に長時間立つのが苦痛で、手間のかかるごぼうはあまり調理したくなかったのだ。
「私も家族もきんぴらごぼう大好きだったんですけどねぇ、今はやっと食卓にだせるようになりましたよ・・・」私達の仕事、カイロプラクティックはもちろん資格もなければ、保険もきかないものです。
ですが、地道とはいえ、身体の不調で悩んでいらっしゃる方に対して確実に何かプラスに働くお手伝いができているなと思えた瞬間であった。“茨城の母”の家に『きんぴらと笑顔』が戻ってきた。
まずはこれでいいのではないか・・・
そして私自身も元気をもらえた、
いい仕事させてもらっているなと再確認できた一日であった。
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